Presented by NAFL 日本語教師養成通信講座
  ことばの仕組み(文法)

分類:名詞
「〜ことが好きです」と「〜のが好きです」は、同じ意味です、と生徒に説明してもいいですか?
 ご質問の「好きだ」という述語においては、「こと」と「の」に違いがあまり感じられません。形式名詞「こと」「の」の違いは、次の例に見られるように、動詞述語の文において多く問題とされます。

  花子が歩いてくるのが見えた。
×花子が歩いてくることが見えた。
 誰かが叫んでいるのが聞こえた。
×誰かが叫んでいることが聞こえた。

 このように述語が感覚を表す動詞の場合、「の」を用いた文は自然な文として許容されますが、「こと」を用いた文は不自然に感じられます。このため、「の」は例に見られるように五感で直接体験されるような具体的な動作、状態、出来事を表し、一方の「こと」はより抽象化された概念を表すと考えられます。

 このことから考えると、「好きだ」を述語とする以下の二つの文にも、この違いが反映されているはずです。

 a) 僕は映画を観ることが好きだ。
 b) 僕は映画を観るのが好きだ。
 c) 僕はこうしてのんびり映画を観ることが好きだ。
 d) 僕はこうしてのんびり映画を観るのが好きだ。

 c)、d)のように、「こと」「の」に先行する部分がより具体的な内容を表す場合、「の」を用いた文に比べ「こと」を用いた文にやや不自然さが感じられます。

 とはいえ、「命じる」「約束する」などの動詞の前では「の」が用いられにくいという現象も指摘されており、「こと」「の」の違いを「抽象的」対「具体的」という対立に還元できるかどうか、疑問が残るところです。

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