Presented by NAFL 日本語教師養成通信講座
  ことばの使い方(社会言語学・敬語)

分類:尊敬語
「ご回答ください」「ご回答致します」の「ご」は両方共正しい?
 「ご〜する」という表現は、行為者が話し手であっても、敬意を払うべき相手であっても用いることが可能です。行為者が敬意を払うべき相手の場合には、相手の行為を表す動詞の前に「ご」をつけ、尊敬の意を表します。したがって、以下の表現はいずれも許容可能です。

   ご報告下さい/ご報告致します
   ご連絡下さい/ご連絡致します

 一方、行為者が話し手である場合には、相手に関わる行為を表す動詞の前に「ご」をつけ、謙譲の意を表します。したがって、話し手の行為が相手に関わりのない場合には、「ご〜する」「ご〜致す」という言い方は用いられません。

  ×ご検討致しました件
  ×ご執筆致したく…

 いずれも、相手の行為を表す場合には、自然な表現として許容できます。

   ご検討いただきました件
   ご執筆いただきたく…

 ところで、「ご回答致します」には少し違和感を覚えます。このように人によって許容度に違いが見られるのは、行為を表す名詞がどの程度相手に関わるものかという個々人の感じ方の違いが「ご〜する」の許容度に反映されているからです。私においては、「報告する」「連絡する」という行為の相手への関わり方に比べて、「回答する」という行為の相手への関わり方を弱いものとして捉えているということになります。逆に人によっては、「ご検討致します」を許容可能とされることもあるのではないでしょうか。なお、「する」の謙譲語である「致す」の代わりに「申し上げる」を用いた場合、やや不自然とした「ご回答致します」は「ご回答申し上げます」となり、いくらか許容度が上がるように感じられます。これは単に行為を行うことを表す「致す」に対して、「申し上げる」が聞き手のために行為を行うという意味を持つためでしょうか。

 最後に、「ご了承致します」「ご案内ください」の不自然さについて。「了承する」という動詞の表す行為は、目上の者、権威あるものが行う行為であるとの含みを持ちます。「ご了承致します」の不自然さはそのことによるものと考えられます。やや極端な例では、「ご許可致します」「ご容赦致します」も同じ理由から用いることができません。「案内する」の場合は逆で、敬意を払うべき相手に案内を求めるという場面がそもそも想定しにくいのです。同じ「案内する」で相手の行為を表す場合でも、依頼表現でなければ「先日ご案内頂いた…」のように許容可能な表現となります。

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