Presented by NAFL 日本語教師養成通信講座
  ことばの仕組み(文法)

分類:動詞
「お電話差し上げる」「お電話して差し上げる」の意味の違いはありますか。差し上げるという言い方が、やや優位な立場を意味しているように思えるのですが。
 「差し上げる」は「やる」の謙譲語であり、「やる」には本動詞として用いられる場合と、補助動詞として用いられる場合とがあります。

 例えば「先生に記念品を差し上げた」という文では、「差し上げる」は本動詞として用いられており、話し手から「先生」への具体的な物(「記念品」)の移動が表されています。この場合、「差し上げる」を用いることに特に問題はないと思われます。

 ご質問の「お電話して差し上げる」では、「差し上げる」が補助動詞として用いられています。動詞に補助動詞「やる」が続いた「してやる」という形式は、「行為者のおこなう行為によって行為の受け手に恩恵がもたらされること」を表します(「仕事を手伝ってやる」「犬の世話をしてやる」)。「差し上げる」と謙譲表現を用いたところで、「行為者によって恩恵がもたらされる」という意味が失われるわけではありませんから、敬意を払うべき相手には用いられません。

 一方、「お電話差し上げる」や「ご連絡差し上げる」という文の場合は、「先生に記念品を差し上げた」同様「差し上げる」が本動詞として用いられていると考えられます。とはいえ、具体的なものが移動するというよりは、方向性をもつ行為がおこなわれることが表されているものです。「お電話して差し上げる」同様「優位な立場」に立った発話であるように感じられるとすれば、二つの場合に見られる「行為の授受」という共通点によるものでしょうか。

 「お電話して差し上げる」だけでなく「お電話差し上げる」を用いることにも抵抗をお感じになるようでしたら、「お電話いたします」という授受に対して中立的な表現のほか、「お電話申し上げます」をこれに換えることも可能でしょう。

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